安い制作会社が削っている工程とは
2026年 5月 8日
「とにかく安くサイトを作りたい」「相見積もりを取ったら、会社によって金額差が大きすぎる」。このとき多くの企業が気になるのが、安い制作会社は何を削っているのか、という点です。結論から言うと、安い制作会社が削りやすいのは、見た目では気づきにくい工程です。たとえば、調査、情報設計、ユーザー検証、原稿整理、アクセシビリティ確認、品質確認、公開後の運用配慮などです。完成直後はそれっぽく見えても、問い合わせが増えない、更新しづらい、あとから直しが多いという形で問題が表面化します。価格差は、単に利益率の違いではなく、どこまで工程を持つかの違いであることが多いです。
安い見積もりで最初に削られやすいのは「見えない工程」
Web制作では、デザインやコーディングは成果物として見えやすい一方で、その前後にある工程は発注側から見えにくい傾向があります。そのため、価格を下げる必要がある場合、まず削られやすいのは「目に見えにくいが、本来は重要な工程」です。
- 事前ヒアリングの深さ
- 競合調査や現状分析
- ターゲット整理と導線設計
- 情報設計やサイト構造の検討
- 原稿整理やコンテンツ設計
- 公開前後の確認と改善提案
この部分を削ると、制作は速く見えます。しかし実際には、要件の認識ズレ、導線不足、情報不足、更新しづらさとして後から返ってきます。安さの正体は、作業量の圧縮だけではなく、思考と検証の圧縮であることが少なくありません。
削られやすい代表例1:ユーザー調査と要件整理
本来、サイトは「誰に、何を伝え、どこで成果を取るか」を整理してから設計すべきです。しかし低価格案件では、この工程がほぼ省略されることがあります。ヒアリングが短時間で終わり、既存資料の読み込みや、ターゲットの認識合わせも浅いまま進むケースです。
- 担当者の感覚だけで方針を決める
- 社内事情を優先し、ユーザー視点の整理を省く
- 競合との違いを言語化しない
- 問い合わせや資料請求までの障壁を確認しない
結果として、「何となくきれいだが、強みが伝わらないサイト」になりやすくなります。安い制作会社そのものが悪いのではなく、予算内で成立させるために、最初の整理を薄くせざるを得ない構造があるのです。
削られやすい代表例2:情報設計と導線設計
サイト成果に直結しやすいのが、情報設計です。どの情報をどの順序で見せるか、メニューをどう整理するか、CTAをどこに置くか、といった設計です。ここが弱いと、ユーザーは必要な情報にたどり着けず、比較検討の途中で離脱します。
- サイトマップが浅く検討されていない
- ページごとの役割分担が曖昧
- ナビゲーション名称が社内用語のまま
- CTAの位置や文言が感覚で決まる
- 下層ページの役割が整理されていない
安価な制作では、トップページ中心で進み、下層ページや導線全体の整合が後回しになりがちです。その結果、公開後に「アクセスはあるのに問い合わせが増えない」という状態になりやすくなります。
削られやすい代表例3:原稿とコンテンツの設計
制作費を抑える案件では、原稿は支給前提、または既存サイトの流用前提になることが多くあります。もちろんそれ自体は悪くありません。ただし、支給原稿の整理、読者視点での再構成、SEO観点での補強が入らないと、ページの質は大きく変わります。
- 会社紹介の言い換えだけで終わる
- 比較検討に必要な情報が不足する
- 導入対象や得意領域が曖昧なまま
- 抽象語が多く、差別化が弱い
- 検索流入を意識した設計が弱い
安い制作会社は、原稿そのものを「素材」として受け取り、編集までは含めない場合があります。すると、ページは存在しても、営業資料の置き換えにとどまり、成果に結びつきにくくなります。
削られやすい代表例4:ユーザーテストと品質確認
公開前にどの程度チェックするかでも、制作の質は変わります。操作しやすいか、迷わないか、フォームで詰まらないか、スマホで見づらくないかといった確認は、本来かなり重要です。しかし低価格案件では、確認が制作者目線の動作確認にとどまり、実際の利用者視点の検証までは行われないことがあります。
- 担当者チェックのみで公開する
- 第三者の操作確認を入れない
- フォームエラーや導線離脱を見ない
- 細かな表記・余白・読みやすさの確認が浅い
- ブラウザ差分や端末差分の確認範囲が狭い
ここを削ると、公開後に小さな不具合が積み重なります。しかも小さな不具合ほどCVに効きます。見た目では問題なさそうでも、実際には成果を落としていることがあるため要注意です。
削られやすい代表例5:アクセシビリティ対応
アクセシビリティは、低価格案件で後回しにされやすい領域です。代替テキスト、見出し構造、ラベル、エラー表示、キーボード操作、色だけに依存しない伝達などは、丁寧に見ると工数がかかります。ですが、ここを削ると、一部ユーザーにとって使えないサイトになり、BtoBでも機会損失につながります。
- 見た目優先で構造が崩れる
- フォームのラベルやエラー文が弱い
- 色だけで状態を伝える
- 画像やボタンの意味が伝わらない
- キーボード操作や読み上げ配慮が不足する
しかもアクセシビリティの不足は、単なる配慮不足ではなく、品質確認不足の表れでもあります。公開後に直そうとすると、デザインや実装の前提から見直しになる場合もあります。
削られやすい代表例6:運用しやすさと公開後の視点
安い制作では、公開時点をゴールにしてしまいがちです。しかし実務では、公開後に更新しやすいか、分析しやすいか、改善しやすいかが非常に重要です。CMSの設計、入力ルール、再利用できる部品設計、GA4やCV計測の整備などが弱いと、運用コストが後から膨らみます。
- CMSが更新担当者向けに設計されていない
- ページ追加時のルールがない
- 計測設計が不十分
- 公開後の改善前提で作られていない
- 保守範囲が曖昧
初期費用が安くても、更新のたびに外注が必要になれば、総コストは高くなります。制作費だけでなく、運用費込みで判断することが重要です。
安いこと自体が悪いのではない
誤解してはいけないのは、安い制作会社が必ず悪いわけではないという点です。テンプレート活用、対象範囲の限定、ページ数の圧縮、原稿支給前提など、条件が明確なら低コストでも成立します。問題は、削っている項目が見えないまま比較してしまうことです。金額だけを見ると安く見えても、必要な工程が抜けていれば、後から高くつきます。
- 何を含み、何を含まないかを明確にする
- 調査・設計・原稿支援・検証の有無を確認する
- 公開後の運用まで含めて比較する
- 成果責任の前提をすり合わせる
まとめ(実務アクション)
安い制作会社が削りやすいのは、調査、情報設計、原稿設計、ユーザー検証、アクセシビリティ、品質確認、運用設計といった「見えにくいが成果に効く工程」です。見積もり比較では、総額だけでなく、どの工程が入っているかを確認してください。特にBtoBサイトでは、問い合わせ導線、比較検討情報、更新しやすさまで含めて判断しないと、公開後に差が出ます。価格差を見るときは、「何ページ作るか」ではなく、「何を考え、何を検証し、何を残してくれるか」で見るのが実務的です。