NPSが改善しない理由:満足度指標がUX改善に向かないケース
2026年 2月 4日
Net Promoter Score(NPS)は「推奨意向」を測る指標として多くの企業で導入されていますが、UX改善の実務で思ったほど成果につながらないケースが少なくありません。本稿では、NPSがなぜ単独ではUX改善に向かないのかを整理し、実務でどのように扱うべきかを解説します。
NPSの基本とその目的
NPSとは顧客に「この製品やサービスを他者に薦める可能性」を0〜10で評価してもらい、「推奨者」の割合から「批判者」の割合を差し引いたスコアです。ロイヤルティや顧客関係性の指標として用いられますが、これ自体がUXの細部を測る設計にはなっていません。NPSは「満足度/ロイヤルティの大まかな指標」であり、UXの具体的な体験要素や利用行動を直接測るものではありません。
NPSがUX改善に向かない典型的な理由
NPSによる評価は簡便ではあるものの、UX改善に直結しない理由はいくつかあります。
- 1. 全体評価でしかない
NPSは推奨意向という“感情的な評価”を示すだけで、「なぜその評価になったか」までは示しません。どの機能が不便なのか、どの体験が評価されているのかといった具体的な洞察は得られません。 - 2. 利用コンテキストを捉えていない
NPSは「推奨するかどうか」という尺度であり、使用シーンやユーザーの目的・制約といった文脈情報を含んでいません。UIの使いやすさや導線の問題が評価に反映されないことがあります。 - 3. サンプルサイズの問題
NPSは統計的に有意な情報を得るためには大きな回答数が必要です。小さなサンプルではスコア自体がノイズに左右され、改善指標としては信頼性が低くなります。 - 4. スコアの粗さ
NPSでは評価を推奨者・中立者・批判者の3つに分け、7〜8の中立者を無視する計算方式であり、多くの情報が切り捨てられます。詳細な満足度や不満点といった nuance が見えにくくなります。 - 5. 自己申告データの限界
NPSは回答者の「推奨意向」に依存する自己申告データです。回答時の気分や直近の出来事に影響を受けやすく、実際の利用行動とは乖離するケースがあります。
実務上の課題:NPSが改善につながらない状況
NPSを測った結果、スコアの変動はあるものの、具体的な改善アクションにつながらないことがあります。それは次のような状況です。
- スコアは上下しているのに、どこが改善されたか分からない
NPSの変動だけでは、どの施策がUX向上に寄与したのかが読み取りづらいため、改善のPDCAが回りにくくなります。 - 推奨度が高くても、利用中の課題が残る
推奨意向が高い顧客でも、特定の機能や導線で躓きがある場合があります。NPSは総合評価であり、局所的な課題を見逃すことがあります。 - NPSが高い=UXが良いわけではない
NPSは満足・ロイヤルティ傾向を測るだけで、UXの定量的な使いやすさや心理的負荷などは直接測れません。別のUX指標と組み合わせなければ、本質的な改善に結びつかないことがあります。
実務でNPSを使うための補完設計
NPSを完全に否定するのではなく、局所的なUX改善に結び付けるためには補完的な設計が必要です。
- 定量データと定性データの併用
NPSだけでなく、タスク成功率や操作時間、エラー率などの定量的指標を評価し、合わせてユーザーインタビューや行動ログ分析などの定性情報を用いることで、どこを改善すべきかが見えてきます。 - オープンエンド質問の活用
NPSに付随する自由記述のコメントを分析し、問題点の原因を探ります。単なるスコア以上のインサイトが得られ、改善アクションにつながります。 - ターゲットやシーンごとのセグメンテーション
全体のNPSだけでなく、利用シーンやユーザータイプごとに評価を分けて分析することで、重要な UXの改善ポイントを区別できます。
まとめ(実務アクション)
NPSは簡便な顧客満足・ロイヤルティの指標として有効ですが、UX改善の指標としては限界があります。そのまま使うだけでは実務で成果につながりません。以下のアクションを実践してください。
- NPSを単独で使わず、複数のUX指標と組み合わせる
- 自由記述を含めたVoC分析で改善ポイントを具体化する
- 定量的な行動データと定性インサイトを併用する
- 対象ユーザーや利用シーンごとにセグメントして評価する
- UX改善施策の効果とNPSの変化を定期的に比較・評価する