“理想のユーザー像”が現場でブレる理由:共通言語化の設計
2026年 2月 1日
「ペルソナは作ったはずなのに、現場で判断が割れる」「部署ごとに想定ユーザーが微妙に違う」。こうした状態は、理想のユーザー像が“共通言語”として設計されていないことが原因です。本稿では、BtoBサイトやサービス改善の現場でユーザー像がブレる構造的理由を整理し、意思決定に耐える共通言語としてのユーザー像をどう設計すべきかを実務視点で解説します。
ユーザー像がブレる本当の原因
ユーザー像のブレは、担当者の理解不足や運用ミスではなく、設計段階の問題で起きることがほとんどです。典型的な原因は以下です。
- 属性中心で定義されている
年齢・役職・業種といった属性情報だけで作られたユーザー像は、意思決定の場面で判断材料になりません。行動や判断基準が定義されていないため、解釈が分かれます。 - 「理想像」と「実在ユーザー」が混ざっている
マーケティング的に都合のよい理想ユーザーと、実際に利用しているユーザーが混在すると、現場で参照すべき像が曖昧になります。 - 意思決定に使う前提で作られていない
ペルソナが資料として存在するだけで、「どんな判断に使うのか」が定義されていないと、現場では使われなくなります。 - 更新されず形骸化している
市場や顧客が変化してもユーザー像が更新されなければ、現実とのズレが広がり、各自が勝手な解釈を持ち始めます。
共通言語としてのユーザー像に必要な要素
現場でブレないユーザー像とは、「説明用の人物像」ではなく、「判断基準を揃えるための設計物」です。そのために必要な要素は次の通りです。
- 行動と文脈の明文化
どんな状況で、何を目的に、どんな制約の中で行動しているのかを具体的に定義します。これにより、判断時に立ち戻る軸が生まれます。 - 課題と成功条件の明確化
ユーザーが「困っていること」と「成功と感じる状態」を明示します。これがないと、施策評価が主観的になります。 - 意思決定に直結する判断基準
情報を選ぶ基準、比較時に重視するポイント、避けたいリスクなどを言語化します。これが現場で最も使われる部分です。 - 非対象ユーザーの定義
「このユーザーは想定しない」という線引きを明確にすることで、判断のブレを防ぎます。
共通言語化のための設計ステップ
ユーザー像を共通言語として機能させるための、実務的な設計ステップを紹介します。
- ステップ1:利用シーンベースで分解する
ユーザーを人物像で捉えるのではなく、「どのシーンで使われるか」「どんな業務文脈か」で分解します。これにより抽象度が下がります。 - ステップ2:意思決定シーンを特定する
比較・導入・利用・継続といった判断が発生する場面を洗い出し、その場面ごとの思考や不安を整理します。 - ステップ3:判断に使う質問を定義する
「このユーザーはこの情報で判断できるか」「このUIはこの状況で使われるか」といった問いをユーザー像に紐づけます。 - ステップ4:ドキュメントとして固定する
スライド1枚や短い文章で、誰でも参照できる形にまとめます。分厚い資料は使われません。
現場で使われ続ける運用設計
共通言語は作って終わりではありません。使われ続けるための運用設計が不可欠です。
- レビュー時の参照ルール化
デザインレビューや施策検討時に「どのユーザー像視点か」を必ず明示するルールを設けます。 - ズレた判断を検知する仕組み
判断が割れたときに「ユーザー像のどこが曖昧か」を振り返ることで、定義の改善につなげます。 - 定期的な見直し
四半期や半期ごとにユーザー像を見直し、現実との乖離を修正します。
まとめ(実務アクション)
理想のユーザー像を現場で機能させるために、以下を実践してください。
- 属性ではなく行動・判断基準でユーザー像を定義する
- 意思決定シーンとユーザー像を明確に結びつける
- 非対象ユーザーを含めて線引きを言語化する
- 短く参照しやすいドキュメントに落とす
- レビューや判断の場で必ず参照する運用を作る