ペルソナを作っても活用されない理由と再設計の方法
2025年12月13日
UXの現場で頻繁に起きる問題のひとつが、次のような状態です。
「ペルソナは作った。だが使われていない。」
手間をかけて作ったはずのペルソナが、会議でも改善でも参照されず、資料のどこかに眠ったままになる。この状況には明確な原因があります。
この記事では、ペルソナが活用されない理由と、実務で“使える”形に再設計する方法をまとめます。
1. ペルソナが活用されない主な理由
理由① ストーリーが精緻すぎて、実務に持ち出せない
多くのペルソナは、生活背景・家族構成・一日の行動などの詳細が盛り込まれています。これらは共感には役立ちますが、UX改善の意思決定では使いどころがないことがほとんどです。
つまり、ペルソナが“読み物”になってしまっている状態です。
理由② 「意思決定の基準」として機能していない
本来ペルソナは、次のような判断基準になるべきものです。
- どのUIを優先して改善するか
- どの導線が最も価値を生むか
- どの情報が不足しているか
しかし多くのペルソナは、ユーザーの“性格”や“趣味”のような判断に使えない情報が中心で、UX設計の意思決定に結びついていません。
理由③ データとのつながりが弱い(=仮説の域を出ない)
ヒアリング数名の意見から作られたペルソナは、しばしば“もっともらしい仮説”になりがちです。しかし、定量データや行動ログとの接続が弱いため、「本当にこのタイプが多いのか?」が分かりません。
理由④ 関係者の認識を合わせる仕組みがない
ペルソナは作った瞬間がピークで、その後共有されず、更新もされず、関係者の認識がバラバラになる――これは非常に多いケースです。
2. 実務で使われるペルソナは「3つの要件」を満たしている
活用されるペルソナには共通点があります。それが以下の3つです。
① 行動が中心に設計されている
性格や属性ではなく、行動・課題・判断軸が中心に置かれているかどうかが重要です。
- どのページをよく見るか?
- どこで迷うか?
- どういう情報で意思決定するか?
② 定量データとの整合性がある
GA4などの行動データと照合し、その行動が実際に多いのかを確認できる状態にします。
「このペルソナの行動は、どのセグメントに近い?」という問いでデータと結びつけます。
③ 意思決定に使える形でまとめられている
例:
- このペルソナが最も重視する情報は何か
- このペルソナが離脱しやすい導線はどこか
- このペルソナにとって致命的な障害は何か
判断ポイントが整理されているほど、実務で活用されます。
3. 実務で使えるペルソナの「再設計テンプレート」
RARE TEKTのプロジェクトでも使いやすい、最小限で強いペルソナ構造を紹介します。
【再設計テンプレート】
- 役割・状況(仕事・目的・制約)
- 主要タスク(どんな行動をする人か)
- 評価基準(何が“良い”“悪い”と感じるか)
- 課題・つまずきやすいポイント
- 行動ログと対応するセグメント
これだけで、会議でも改善でも十分に使えるペルソナになります。
4. 再設計の手順(4ステップ)
- 既存のペルソナから“意思決定に使えない情報”を削る
家族構成・趣味・スケジュールなどは削除か縮小。 - 行動に関する情報を追加
閲覧ページ、迷うポイント、意思決定の流れなど。 - GA4のセグメントと紐づける
例:新規 / リピート、広告 / 自然検索など。 - 関係者に共有し、更新サイクルを作る
四半期ごとのデータ更新が理想。
5. ペルソナを使うとUX改善が“速くなる”理由
再設計されたペルソナは、UX改善の以下のポイントで役立ちます。
- 意思決定のスピードが上がる
- 施策の優先順位が決めやすくなる
- 関係者間で議論がズレにくくなる
- 改善案の効果検証がしやすくなる
まとめ
ペルソナが活用されない最大の理由は、「意思決定に使えない形で作られている」ことにあります。
再設計のポイントは次の3つです。
- 行動中心で構築する
- GA4などの定量データと接続する
- 判断基準として使える形に整える
ペルソナは“資料”ではなく、“意思決定ツール”。形骸化したペルソナでも、構造を見直すだけで、UX改善の強力な武器になります。