仮説を立てる前に“行動ログ”を読むと見える意外なインサイト
2025年12月12日
UX改善やサイト改善のプロジェクトでは、よく「まずは仮説を立てましょう」と言われます。しかし実務では、仮説づくりの前にすべき行動があります。
それは「行動ログを読むこと」です。
理由はシンプルで、仮説はユーザー行動に基づいていないと精度が上がらないからです。
この記事では、仮説前に行動ログを読むことで見えてくる“意外なインサイト”と、その読み解き方を紹介します。
1. 行動ログは「ユーザーが語らない真実」を教えてくれる
インタビューやアンケートで得られるのは、あくまでユーザー自身の主観です。本人が意識していない行動や、本当の迷いは語られないことが多くあります。
対して行動ログは、ユーザーの“実際の行動”を客観的に示すデータです。
行動ログが教えてくれる典型例
- 「見ていないページ」:ユーザーはその存在を知らない
- 「触られていない導線」:文言か配置を誤解している可能性
- 「戻る操作が多い」:迷っている、比較できていない
- 「特定の条件で離脱が集中」:操作負荷や不安がある
インタビューでは「そんなつもりはないです」「普通に操作しました」と言われるような行動も、ログでは可視化されます。
2. 仮説を立てる前にログを見るべき理由
理由① 仮説の方向性を“間違えなくなる”
仮説を先に作ると、どうしても作り手の主観や経験が反映されます。すると、「実際にはそこでは問題が起きていない」場所を深掘りしてしまい、時間だけが消えていくことがあります。
ログを先に見ることで、仮説の方向性が現実と一致しやすくなります。
理由② 発生頻度が分かるため、優先順位が決められる
どれだけ“それっぽい”仮説でも、発生頻度が低ければ改善効果は小さくなります。
ログは、どの行動が全体の何%を占めているのかを示す。
これにより、改善すべき箇所の優先順位がはっきりします。
理由③ “想定外の行動”が仮説を生むことがある
UX改善では、ユーザーが想定通りに動いてくれることはほとんどありません。ログを見ると、時に予想もしない行動が大量に見つかります。
例:
- 入力フォーム → 1ページ目に戻る行動が繰り返されている
- 説明ページ → 入口導線がほとんどクリックされていない
- カテゴリ一覧 → スクロールせず最初の2件しか見られていない
こういう“予想外”こそ、強い改善仮説につながります。
3. 実務で使える「行動ログの読み方」
仮説前に見るべきログは、次の3つです。
① 行動フロー(GA4:経路探索)
ユーザーがどの順番でページを移動しているかを見ることで、「意図した導線」と「実際の導線」のズレが分かります。
② イベントの滞留箇所
特定UIでの離脱・戻る操作・迷い行動が可視化されます。
- スクロールが浅い → 内容が届いていない
- 入力エラーが多い → UIの負荷が高い
- 比較コンテンツに到達していない → 導線の問題
③ セグメント別の差異
新規・リピート、広告・自然検索などで行動が異なるため、ユーザータイプごとに見ると課題が明確になります。
4. 行動ログから“そのまま仮説になる”ポイント
仮説はデータから自然に湧き上がってくる形が最も強く、成功率も高くなります。
ログを読むと、次のような構造で仮説が作れます。
行動ログ → 読み解き → 仮説
- 説明ページの閲覧が極端に少ない → 入口文言が伝わっていない → 導線文言・配置改善の仮説
- フォーム2ページ目で大量離脱 → 難しい質問が集中 → 質問の順序改善の仮説
- 比較ページに到達していない → 比較を促すUIが弱い → 比較導線の強化仮説
このように、行動から仮説を逆算すると、自然とロジックが通った改善案ができます。
5. ログ → 仮説 → 定性調査の流れが最も強い
仮説を立てる前にログを見ると、その後の調査の質が一気に上がります。
典型的な流れ:
- 行動ログで現象を特定
- ログを元に仮説を立てる
- ユーザビリティテスト・インタビューで検証
この順番だと、調査対象のUIが明確になり、観察ポイントも絞れるため、定性調査の精度が大幅に向上します。
まとめ
仮説づくりは重要ですが、ログを見ずに仮説を立てると方向性がずれやすく、改善の成功率が下がります。
行動はユーザーの“無意識の判断”をそのまま映し出す。
まず行動を見ることで、仮説の精度が上がり、UX改善のスピードも効率も大きく変わります。