音声入力ユーザーの行動を観察して見えてきた設計の盲点

2025年12月 6日

音声入力はスマートフォンの普及とともに一般化し、視覚障害者だけでなく、高齢者・手が離せないユーザー・一時的に操作が難しいユーザーまで幅広く利用されています。

しかし、実務のUI/UX設計では「音声入力ユーザー」の行動を想定していないケースがほとんどです。RARE TEKTの上野が実際に観察したところ、視覚中心のUI設計では気づけない“盲点”が見えてきました。

1. 音声入力ユーザーは「意図したページにたどり着けない」ことが多い

音声入力の最大の特徴は、ユーザーが“画面を見ていない時間”が存在することです。これにより、以下の問題が頻発します。

  • ボタン名を誤認識して別ページに飛ぶ
  • 似た名前のリンクが複数あると迷う
  • ナビゲーション項目を正しく読み上げられない

特に「カタカナ英語」が混在するサイトでは誤認識率が高く、目的のページに移動できないケースが多く見られます。

2. 音声入力では「短く、固有名で言えるUI」が圧倒的に強い

音声入力ユーザーの行動を観察すると、ボタン名やメニュー名が長いと操作が不可能に近くなります。

例:

  • ❌ NG:「お問い合わせ・資料ダウンロード」
  • ⭕ OK:「資料請求」

音声入力で最も強いパターンは、短く、固有名詞化した名前です。

  • 「メニューを開く」ではなく「メニュー」
  • 「製品カテゴリ一覧」ではなく「製品一覧」

つまり、“音声で発話できる名前”であることがUIの新たな要件となっています。

3. 音声入力ユーザーは「スクロール操作」が極めて苦手

多くのユーザーは、音声でリンクを選んだあと、ページ下部の情報にアクセスします。

しかし、音声だけでのスクロール操作には課題があります。

  • 「下へスクロール」が意図した距離動かない
  • 読み上げ位置が突然飛ぶ
  • スクロール量が多いと情報の場所を見失う

この結果、長すぎるページは操作不能になります。

音声操作前提では「情報密度を高めてページを短くする」ことが必要です。

4. 音声ユーザーにとって“フォーム”は最難関の操作

フォームは音声入力ユーザーにとって最も難しい領域です。

  • label が明確でないと入力欄が特定できない
  • プレースホルダーだけだと読み上げされない
  • エラー文言がどこで読まれているか分からない

特に、エラー文の読み上げ順が悪いと「何を直すべきか分からないまま離脱」します。

実務で有効な対応は以下です。

  • input と label を必ず for / id で関連付ける
  • エラー文言は input の直後に置く
  • ボタン名を「送信」ではなく「問い合わせを送信」にする

5. 音声入力ユーザーは「ページの文脈」を音声で理解している

視覚ユーザーはUIの形やレイアウトから文脈を読み取りますが、音声ユーザーは読み上げ順・見出し階層・ariaラベルによって文脈を理解します。

そのため:

  • 見出し階層が崩れると理解できない
  • 読み上げ順がズレると文脈が飛ぶ
  • アイコンボタンに aria-label がないと目的が分からない

音声入力ユーザーのUX改善は、結果として全ユーザーの情報理解の向上につながります。

明日からできる実務アクション

  • ボタン名・メニュー名を「短く、固有名詞」にする
  • ページを長くしすぎない(情報密度を最適化)
  • フォームのlabel / input / エラー順を見直す
  • 読み上げ順(DOM順)を整理する
  • 主要導線のaria-labelを必ずつける

音声入力ユーザーの行動を理解することは、アクセシビリティ支援にとどまらず、UX全体の改善につながります。視覚中心の設計では見えない“盲点”を補完することで、より多様なユーザーに届くサイトになります。


参考(公式リンク)

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