色だけで伝えないUI:実務で使える3つのデザインパターン

2025年12月 3日

アクセシビリティの原則として有名な「色だけで情報を伝えない」は、分かっているつもりでも実装に落とし込めていないケースが多くあります。

特に、色覚多様性のあるユーザーや、明るい場所・暗い場所・低品質ディスプレイなど環境に左右されるユーザーにとって、色だけに依存したUIは大きなバリアになります。

この記事では、RARE TEKTの上野が改善支援でよく使う“実務で本当に役立つ3つのデザインパターン”を紹介します。

1. 色だけに依存したUIは「理解の遅さ」と「誤操作」を生む

色で状態を表すUI(赤=エラー、青=選択中など)は馴染みがありますが、デザインとしては危険です。

次のような問題が発生します。

  • 赤と緑の区別がつかないユーザーが一定数いる
  • ディスプレイ環境で色が変わる(スマホの省電力モードなど)
  • 色の濃度・明度が低いと「違い」が伝わらない
  • 色の意味が文化圏・サービスによって異なる

つまり、色だけに頼るUIは「見えている人には便利だが、それ以外には伝わらない」不安定な設計です。

2. 実務で使える“3つの補助デザインパターン”

色を完全にやめる必要はありません。重要なのは、色+もう1つの手がかりを組み合わせることです。

① 形(シェイプ)で状態を区別する

最も汎用性が高いのが「形による区別」です。

  • エラーアイコンに三角形を使う
  • 成功メッセージに丸やチェックを使う
  • 選択中のボタンは枠線を太くする

色の違いが見えなくても、形の違いは確実に伝わるため、誤操作が大きく減ります。

② テキストで意味を補足する

もっとも効果が高いのが「言葉で明示する」方法です。

  • エラー → 「入力内容を確認してください」
  • 選択状態 → 「選択中」や「ON」などのラベル
  • グラフ → ラベルを直接線・棒の近くに配置

テキストはどのユーザーにも伝わるため、色覚特性に関わらず理解できます。

③ パターン(模様)で差をつける

グラフ・図版などで特に有効なのが“パターンによる区別”です。

  • 斜線
  • ドット
  • 格子
  • 波線

棒グラフや円グラフの領域を色+パターンで表すと、色覚に依存せず視認できます。

3. 具体例:よくある「色だけ依存UI」と改善案

エラー表示の例

❌ NG:赤字だけでエラーを表示

⭕ OK:赤字+アイコン+「入力内容を確認してください」

選択中ボタンの例

❌ NG:選択中のボタンを青にするだけ

⭕ OK:青+太めの枠線+「選択中」ラベル

グラフの凡例の例

❌ NG:青と緑だけで区別

⭕ OK:色+パターン(ドット・ストライプ)で区別

4. 色依存を避けることで“総合的UX”が向上する

色以外の手がかりを追加することで、アクセシビリティだけでなくUX全体の改善につながります。

  • 理解が早くなる
  • 誤操作が減る
  • 情報の優先順位が明確になる
  • 視覚だけに依存しないためストレスが減る

結果として、初回訪問者から熟練ユーザーまで、すべてのユーザーにとって使いやすいUIになります。

5. 明日からできる実務アクション

  • 「色だけで伝えている場所」を洗い出す
  • エラー・選択状態・グラフの3領域から改善する
  • 形(アイコン)+テキストを併用する
  • 重要ボタンは色だけでなく“枠線”や“太さ”で強調する
  • Figmaのコンポーネントに「色+補助手がかり」をセットで登録する

色だけのUIは、気づかないうちに多くのユーザーを取りこぼします。小さな改善でも、意味の伝わりやすさは劇的に変わります。


参考(公式リンク)

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