「見た目が良い=UXが良い」ではない理由を数字で説明する
2025年11月23日
「デザインを刷新したのに成果が上がらない」「見た目は良いと言われるのに使いづらいと言われる」。このギャップは、多くの改善プロジェクトで起きています。
実務でよくある誤解が、“見た目の良さと UX の良さはイコールではない”という点です。むしろ、見た目だけ改善すると成果が落ちるケースすら存在します。
この記事では、RARE TEKTの上野が現場で実際に使っている「数字で説明するための根拠」を整理します。
見た目が良くても「判断コスト」が高いと離脱する
デザインを良くしても成果が出ない最も大きな理由が、判断コストの高さです。ユーザーは迷った瞬間に離脱しやすく、これは数字に如実に表れます。
典型的な例:
- 比較ページの離脱率が高い → 選択肢が多すぎる
- CTAのクリック率が低い → 文言が曖昧で判断できない
- スクロール完了率が低い → 情報の優先度が整理されていない
見た目が洗練されても、判断に迷うだけでCTRは簡単に10〜30%落ちます。
逆に、UIが多少古くても判断しやすい導線はコンバージョンが安定します。UXで重要なのは“迷わせない構造”であり、見た目ではありません。
ビジュアル改善だけでは「完了率」が上がらない
実務で最も分かりやすい数字が「完了率」です。
フォームや申込導線では、以下のような条件が揃ったときに完了率が伸びます。
- 入力負荷が低い
- エラーが少ない
- 確認画面の理解がしやすい
- 次のステップが予測できる
見た目の改善だけでは、完了率は1%も変わらないことが多いのに対し、入力負荷や導線の改善は5〜20%改善することが珍しくありません。
見た目ではなく、体験の「負担」が数値に影響します。
“読みやすさ”は見た目では測れない:視線誘導が成果を変える
「読みやすさ」はユーザーの行動と深く関係しています。特に以下の数字は見た目では判断できません。
- スクロール離脱率
- ヒートマップの注目分布
- ファーストビュー滞在秒数
- 次ページ遷移率
見た目が美しくても、視線の誘導が悪ければユーザーは情報を理解できず、数値は落ちます。
たとえば視線誘導を改善しただけで、「記事の読了率が2倍になった」「重要導線のCTRが1.5倍になった」というケースは珍しくありません。
デザインの良し悪しよりも、「読みやすさ」「伝わりやすさ」が数字を動かす要素です。
“体験の流れ”が悪いと、見た目が良くても途中で離脱する
UIパーツがどれだけ洗練されていても、体験の流れ(ジャーニー)に無理があると、数字は落ちます。
よくあるパターン:
- トップ → サービス紹介 → 詳細 → CTA の流れが長すぎる
- 重要情報が複数ページに分散している
- 途中で横道に逸れるリンクが多く、目的から外れやすい
これらの構造問題は、見た目の改善では変わりません。逆に、構造を整えるだけでCVRが20〜40%改善するケースも実務で存在します。
“初見ユーザー”がつまずくポイントは、見た目では判断できない
既存ユーザーや開発側は、サイトの構造を知っているため、多少使いづらくても操作できます。しかし、CVに最も影響するのは「初見ユーザー」の行動です。
- 初見ユーザーは表現の曖昧さに敏感
- 初めて見る導線で迷いやすい
- 複雑な専門用語に反応しやすい
見た目の美しさは「慣れた人の快適性」には影響しますが、初見ユーザーの迷いには効きません。
この差が、数字のギャップとして現れます。
明日からできる“数字で説明する”ためのチェックポイント
- 見た目の改善が「判断コスト」を本当に下げているか
- フォームや導線の負担が軽減されているか(=完了率に効く)
- 視線誘導が改善され、読了率・CTRに反映しているか
- 体験の流れ全体がシンプルになっているか
- 初見ユーザーの迷いが減っているか
見た目が良いことは大切ですが、UXの本質は「迷わない・理解できる・負担が少ない」という体験の設計にあります。数字が動くのは、見た目ではなく構造・導線・心理負荷のほうです。
見た目とUXを切り分けて改善することで、改善の再現性が高まり、ビジュアル依存から抜け出すことができます。