「デザインが古い」と言われたとき、直すべきはどこ?
2025年11月17日
サイトやアプリの改善相談で頻繁に聞く言葉が、「デザインが古い気がする」「なんとなく時代遅れに見える」という指摘です。しかし実務では、この言葉をそのまま受け取ってデザインを刷新しても、期待した成果が出ないケースが少なくありません。
結論から言うと、「古い」と言われるときに直すべき場所は、単なる見た目ではありません。デザインの“老朽化”には、より本質的な要因が隠れています。
この記事では、RARE TEKTの上野が実務で感じている「デザインが古い」と言われたときの本当の改善ポイントを整理します。
色や装飾の問題ではなく、情報の整理が追いついていない
「古い」と言われると、配色・角丸・影・レイアウトなど、見た目のアップデートに意識が向きがちです。しかし、多くのケースで“古さ”を感じさせているのは、実は情報構造の崩れです。
次のような状態は、見た目以前に“時代遅れ”に感じられます。
- 情報が詰まりすぎて優先度が分からない
- テキスト量が多く、視線誘導が弱い
- 古いサイトの名残で要素が増殖している
情報の整理ができていないと、どれだけ見た目を整えても“古さ”は消えません。まず改善すべきなのは情報設計です。
「読みやすさ」と「間の取り方」が現代基準に合っていない
現代のデザインで重要視されるのは、視線のリズムや余白の取り方です。読みやすさの基準が昔と大きく変わっています。
次のような特徴は、古い印象につながりやすいポイントです。
- 行間が狭く、文字が詰まりすぎている
- 余白が少なく、領域が密集している
- 画像とテキストのバランスが悪い
- 1ページあたりの情報量が多すぎる
特にBtoBサイトでは、テキスト主体の設計が多いため、余白や視線誘導が整っていないと、強く“古い”印象を与えます。
UIルールが一貫しておらず、統一感が損なわれている
デザインが古く見える理由の一つが、「一貫性の欠如」です。長年運用してきたサイトは、次のようにUIルールが分断されてしまいがちです。
- ページによってボタン形状が違う
- アイコンのスタイルが混在している
- 余白やコンポーネントの基準がバラバラ
- 過去の改修が積み重なり、統一感が消えている
これらは見た目以上に“古さ”を感じさせます。ルールをまとめたデザインシステムを整えるだけで、印象は大きく変わります。
導線が複雑で、ユーザーが迷いやすい
デザインの“古さ”は、導線の分かりにくさからも生まれます。UX観点で見ると、古いサイトほどユーザーが迷いやすい構造を持っています。
代表的な例は以下です。
- カテゴリが増殖し、本来の位置が分かりにくい
- 目的のページに辿り着くまでのステップが多い
- メニューの文言が抽象的で意味が伝わらない
- サービスの説明が複数ページに分散している
導線が複雑だと、見た目を更新してもUXは改善しません。むしろ複雑さが強調され、使いづらさが増すことすらあります。
“ブランドの現在地”とデザインが一致していない
企業の成長やサービスの進化に対し、サイトのデザインが追いついていないケースも少なくありません。
例えば次のような場合です。
- 事業が拡大しているのに、旧サービス軸のUIのまま
- ターゲットが変わっているのに、情報設計が古いまま
- ブランドメッセージが刷新されているのに、デザインが反映されていない
これは単なる“古さ”の問題ではなく、デザインとブランドのズレによって生じる違和感です。
明日からできる改善ステップ
- まずは「情報が多すぎないか」をチェックする
- 行間・余白・視線誘導など読みやすさを見直す
- UIルールの整理と統一(ボタン・余白・アイコンなど)を行う
- 導線をシンプルにし、目的ページまでの負荷を減らす
「デザインが古い」という言葉は、見た目だけの問題ではありません。情報設計の複雑さ、読みづらさ、統一感の欠如、導線設計の迷いなど、UX全体が古くなっているサインです。
見た目のリニューアルよりも先に、体験の土台を整えること。これが、デザインを「今の時代の基準」に引き戻す最も確実なアプローチです。