UI改善を続けても“使いやすくならない”サイトの共通点
2025年11月15日
デザインを整え、ボタンを見直し、ナビゲーションを改修する。UI改善を積み重ねているのに、なぜか「使いやすくならない」。CV率も離脱率も横ばい──。この状態に陥っているサイトは少なくありません。
実務で多くの改善プロジェクトを支援する中で、RARE TEKTの上野が強く実感しているのは、「UIをどれだけ磨いても、体験の本質に手を付けなければ数値は動かない」という点です。
この記事では、UI改善が成果につながらないサイトに共通する問題を整理します。
見た目の整備に集中し、体験の“流れ”が改善されていない
最も多いのが、UIの要素単位の改善に注力しすぎて、ユーザー体験全体の流れ(ジャーニー)が見落とされているケースです。
例えば、ボタンの色やフォームの位置を改善しても、以下の課題が残っていれば成果は出ません。
- ユーザーが「何をすべきか」判断できない導線設計
- 重要な情報が遷移の奥にあり、見つけられない
- 完了ページまでの流れが複雑で、途中で迷いやすい
UIはあくまで体験を構成するパーツでしかなく、流れそのものが最適化されていなければ効果は限定的です。
“判断コスト”の高さに気づいていない
ユーザーにとっての使いやすさは、見た目のきれいさだけでは決まりません。重要なのは「迷わないこと」「考えなくて済むこと」です。
使いやすくならないサイトは、共通して次のような判断コストが高くなっています。
- どの選択肢を選べばよいか分からない
- クリック後に何が起こるか想像できない
- 似た選択肢が複数あり、比較に時間がかかる
- 文言が抽象的で、自分に関係ある行動かわからない
UIの改善は要素単体を良くする作業が中心ですが、ユーザーはページ全体で「迷う・考える」という負荷を感じています。このコストを下げなければ、本当の意味で使いやすさは向上しません。
改善の指標が“見た目の完成度”に偏っている
成果が出ないサイトほど、「良いUI=綺麗」「今っぽい」「統一感がある」といったビジュアル基準に寄りがちです。
しかし、使いやすさに直結する指標は本来次のようなものです。
- 迷いが減ったか
- 完了率が上がったか
- 滞在が必要以上に長くなっていないか
- ユーザーが目的を達成しやすくなったか
デザインの完成度を追うあまり、ユーザーが感じている“負担”に向き合えていない状態は成果につながりません。
行動データとUI改善がつながっていない
もう一つの共通点は、UI改善とGA4などの行動データが紐づけられていないことです。
「ここを改善したほうが良いと思う」 「他社でもよくあるUIだから採用しよう」
こうした判断にデータが伴っていないと、改善が“当てずっぽう”になります。
改善すべきポイントは、以下のような行動ログから特定できます。
- 離脱が集中しているセクション
- スクロール到達率が急に落ちる箇所
- 入力エラーが多いフォーム項目
- 期待されるCVページに遷移していない導線
UI改善の前に、ユーザーがどこでつまずいているかをデータで把握する必要があります。
機能や情報量が増え、“複雑ゆえの使いにくさ”が大きくなっている
長く運用されているサイトほど、機能追加・ページ追加が重なり、情報構造が複雑になっていきます。ここにUI改善だけを積み重ねても、根本的な複雑さは解消されません。
よくある状態は次のとおりです。
- メニュー構造が増殖し、どこに何があるのか分かりにくくなる
- 重要な情報が複数ページに分散してしまう
- コンテンツの重複で、選択の迷いが増える
複雑さそのものを整理する情報設計を行わない限り、UI改善は焼け石に水になります。
明日からできる改善ステップ
- UIではなく「体験の流れ」を先に描き直す
- 判断コストを下げるため、選択肢や文言を整理する
- GA4で“迷っているポイント”を特定する
- 情報構造(サイトマップ・導線)を見直す
UI改善は重要ですが、それだけでは不十分です。成果が出ない理由の多くは、体験の流れや情報設計といった“上位の構造”にあります。そこに手を入れることで、ようやくUI改善が本来の力を発揮します。
「見た目を整えているのに使いやすくならない」と感じたときは、UIではなく体験全体を見直すタイミングです。実務でも、この視点に切り替えた瞬間に成果が動き始めることが多くあります。