GA4導入後にCV数が減ったときの調査手順:実例付き
2025年11月11日
「GA4に移行したらコンバージョンが減った気がする」―― これは多くの現場で起きている典型的な相談です。 しかし、実際にはデータ欠損よりも定義の違い・集計軸の変化による「見かけ上の減少」であることがほとんどです。 本記事では、GA4導入後にCV数が減った場合の調査手順を、実例を交えて整理します。
1. 想定すべき3つの原因軸
GA4移行後にCVが減ったように見える原因は、次の3分類に整理できます。
- ① 技術的要因:タグやイベント送信の不具合、同意モード、クロスドメイン設定ミス。
- ② 定義の相違:UAのゴール設定とGA4のコンバージョン定義のズレ。
- ③ 集計仕様の変更:アトリビューションや集計ロジックの違いによる数値差。
2. ステップ1:タグ・イベントの送信状況を確認
まず確認すべきは、そもそもイベントが発火しているかです。
- GA4管理画面 > 「データ表示」 > 「デバッグビュー」を開く。
- 対象イベント(例:
purchase、submit_formなど)がリアルタイムで発火しているか確認。 - イベントが送信されていない場合:
- Google タグマネージャーの「プレビュー」モードで該当ページを開く。
- トリガー条件・変数設定を確認。
- 発火しない場合は、要素のclass/id変更や送信タイミングの問題を疑う。
特にフォーム送信後にサンクスページへ遷移するタイプでは、非同期通信やSPAによる未送信が多発します。
3. ステップ2:同意モードと計測除外を確認
ユーザーがCookie同意を拒否した場合、GA4ではコンバージョンが記録されないケースがあります。 対応策としては、次のような確認を行います。
- GA4管理画面 > 「データ収集」 > 「同意モード」の実装状況を確認。
- Google タグマネージャーで consent 状態を変数として送信できているか。
- 同意拒否時もタグが送信されていない場合、推定(モデル化)コンバージョンが反映されるまで最大48時間かかる。
また、内部アクセス除外・特定ディレクトリ除外が設定されていると、正規のCVも除外されてしまうことがあります。 「データストリーム > 詳細設定 > 除外条件」を確認しましょう。
4. ステップ3:コンバージョン定義の相違を確認
UAでは「ゴール完了数」でしたが、GA4ではイベントをコンバージョンに指定する形式です。 定義のズレによるカウント差は非常に多く発生します。
- UA側のゴール名・条件(到達URL/イベント)を確認。
- GA4側で登録している「コンバージョンイベント名」と照合。
- 条件が異なる場合は、イベント登録やパラメータ条件を合わせる。
例:UAで「/thanks」到達をゴールにしていた → GA4ではpage_view+URL条件をイベント登録していない → CV未計上。 このように、同名イベントでも条件の差でCV数は変動します。
5. ステップ4:アトリビューション設定を比較
GA4では既定で「データドリブンモデル」が適用されます。 一方UAでは「ラストクリック」が基本でした。 この違いにより、同じ成果でも配分先が変わり、CV数が見かけ上減ることがあります。
- 管理 > 「アトリビューション設定」からモデルとルックバック期間を確認。
- 広告・SNS・オーガニックなど各流入別でCV率を比較し、差が出ている媒体を特定。
6. ステップ5:レポート集計仕様の違いを理解
UAは「セッションベース」、GA4は「イベントベース」で集計します。 そのため、同一ユーザーが複数CVを行った場合や、ページ再訪の扱いが異なります。
- UA:同一セッション内で1回のゴール完了しか記録されない。
- GA4:イベントとして都度記録(同セッション内でも複数カウントされ得る)。
よって「CVが減った」ように見えても、単純な構造差による見かけ上の変化であることが多いです。
7. 実例:フォーム送信CVが半減したケース
あるBtoBサイトでは、GA4移行後に「問い合わせ送信数」がUA比で約50%減。 調査の結果、次の要因が重なっていました。
- フォーム送信ボタンにGTMのクリックトリガーが設定されていたが、 新デザインでclass名が変更されイベントが発火していなかった。
- さらに、SPA化によるURL未遷移のため「page_view」到達イベントも送信されず。
- 修正後、イベントが正常送信されCV数が回復。
つまり「GA4のせい」ではなく、「移行時のタグ不整合」+「非同期挙動の未対応」が主因でした。
8. まとめ:GA4導入後のCV減少は“仕様差+確認不足”が大半
GA4でCV数が減ったときは、次の順番で確認してください。
- タグの送信状況(デバッグビュー・GTMプレビュー)
- 同意モード・除外設定の確認
- コンバージョン定義の照合
- アトリビューション設定の比較
- セッション/イベントの構造差の理解
「数値が減った=トラッキングが壊れた」ではなく、 まずは前提の違いを整理することが、正確な判断への第一歩です。