GA4×広告の連携でズレる数値をどう読むか
2025年11月10日
Google 広告や Meta 広告と、GA4 の数値が一致しない――。
デジタル計測では“よくある”現象です。重要なのは「どちらが正しいか」ではなく、 なぜズレるのかを構造で理解し、読み解き方の基準を持つことです。
本記事では、GA4と広告プラットフォームの数値差を生む要因と、実務での確認・解釈・運用ルールを整理します。
数値がズレるのは“前提”が違うから
GA4と広告プラットフォームは、データの収集対象・集計軸・配分の考え方が異なります。
- 収集の違い:GA4はサイト上のユーザー行動(イベント)。広告側は広告接触(クリック/ビュー)。
- 集計の違い:GA4はサイト内で発生したコンバージョン数/ユーザーを中心に集計。広告側はキャンペーン・広告ごとの成果に配分して集計。
- 配分(アトリビューション)の違い:既定のモデルやルックバック期間、ビュー経由の扱いがプラットフォームごとに異なる。
よくあるズレの原因(技術)
- 自動タグ(gclid)/UTMの欠落:リダイレクトや短縮URL、アプリ内ブラウザで欠落し、流入が正しく分類されない。
- 同意モード:同意前の計測制限やモデル化コンバージョンにより、GA4と広告で補完量が異なる。
- タグ重複・未発火:同一イベントが二重送信/逆に特定条件で未送信。プレビューとデバッグで確認。
- クロスドメイン未設定:外部予約・決済でセッションが分断し、GA4側のコンバージョン計測が欠損。
- フィルタ/除外:社内IPやスパム除外設定の差で、プラットフォーム間の母数がずれる。
- 処理遅延:GA4は確定までに時間差が生じることがあり、当日比較で乖離が拡大する。
よくあるズレの原因(定義・集計)
- コンバージョンの定義差:広告側は「アカウント内のコンバージョン設定」、GA4は「イベントをコンバージョン登録」。定義が一致していない。
- アトリビューションモデル差:データドリブン、ラストクリック、ポジションベース等、既定や選択が異なる。
- ルックバック期間差:広告側とGA4で“何日前の接触まで成果配分するか”の期間が異なる。
- タイムゾーン/通貨:広告アカウントとGA4プロパティの設定が一致していない。
- ビュー経由の扱い:インプレッションやビューアトリビューションを広告側が含み、GA4はサイト流入がないと計測されない。
トラブル時の確認フロー(実務テンプレート)
- 比較の単位を固定:同一の期間・タイムゾーン・コンバージョン定義で比較し、当日を避け前日以前で照合。
- 技術的前提を確認:対象ページのタグ発火、gclid/UTMの引き継ぎ、クロスドメイン、同意モードの実装状況を点検。
- 定義をそろえる:GA4のコンバージョン対象イベントと、広告側のコンバージョンアクションが一致しているか照合。
- アトリビューション設定を記録:両者のモデルとルックバック期間をメモ。差分が説明できるか確認。
- 媒体別・キャンペーン別に切る:特定媒体でのみ乖離が大きいならUTMや自動タグ、アプリ内遷移など技術要因を再確認。
- 直近の実装変更を洗い出し:公開・タグ更新・LP切替のタイムラインと差分が一致するかを見る。
読み解き方の基準(運用ルール)
- レベル一致を求めず、傾向で判断:日次の“方向性”が一致していれば正常。レベルは一定の乖離を許容。
- 許容乖離幅を決める:媒体・商材・同意モードの有無で許容%を事前合意(例:±15%など)。
- 意思決定の主データを定義:配信最適化は広告側、サイト改善はGA4、と用途で“主”を分ける。
- 期間を合わせて検証:ルックバック期間が長い媒体は週次・月次で整合性を確認し、日次は速報として扱う。
- インクリメンタリティを意識:媒体の貢献はABテストや地理分割、ブランド検索の増減など外部指標も併読。
設定の整合を高めるチェックリスト
- 自動タグ(gclid)有効化、UTM命名規則の統一。
- GA4のコンバージョン登録イベントと、広告アカウントのコンバージョンアクションを一覧化して照合。
- アトリビューションモデル/ルックバック期間を両者で明文化。
- クロスドメイン設定、外部決済・予約の計測可否を明記。
- 同意モードの挙動(同意前の送信可否、モデル化の範囲)を関係者に共有。
- タイムゾーン・通貨・除外IPの設定を統一。
ケース別の“ありがちな原因”と対処
ケース1:広告側CVがGA4より多い
- 広告側がビュー経由や異なるモデルで配分している → モデルと期間を合わせて比較。
- GA4側で同意未取得のユーザーが多い → 同意モードにより欠損。モデル化の有無を確認。
- クロスドメイン未設定 → 購入が外部ドメインで発生しGA4で欠損。設定・タグの整合を修正。
ケース2:GA4のCVが広告側より多い
- GA4で複数イベントをコンバージョン登録 → 広告側の定義と不一致。対象イベントを揃える。
- 広告側がインポート対象外(別タグ計測) → GA4からのインポート範囲を見直す。
ケース3:特定媒体だけ乖離が極端
- アプリ内ブラウザ(SNS)で gclid/UTM が欠落 → ディープリンク/外部ブラウザで開く導線を検討。
- 短縮URLやリダイレクトでパラメータ喪失 → 301/302の扱いとクエリ引き継ぎを確認。
可視化の実務:比較ダッシュボードの作り方
Looker Studio で「GA4のコンバージョン数」と「広告側のコンバージョン」を同一期間・同一キャンペーン軸で並置し、 差分(広告−GA4)と差分率を表示します。
運用では、差分率の閾値を超えたときに原因調査を行うルールにしておくと、日々の数字に振り回されません。
まとめ:ズレは“異常”ではなく“前提差”
GA4と広告の数値差は、仕組みの違いから生じる前提差です。
技術(タグ・同意・クロスドメイン)と定義(モデル・期間・CV定義)をそろえ、 「用途に応じてどの数字を主とするか」を決める。
この運用ルールがあれば、ズレはリスクではなく改善のヒントになります。
参考(公式ヘルプの確認推奨項目)
- GA4: コンバージョンの設定 / アトリビューション設定(モデル・ルックバック期間)
- Google 広告: コンバージョン アクションの設定 / アトリビューション モデルの概要
- タグ実装: 自動タグ(gclid) / UTM(キャンペーン URL 生成ツール) / クロスドメイン計測(GA4) / 同意モードの実装ガイド
※ 具体的な既定値やUIラベルは時期・アカウント設定で異なるため、実際の管理画面で必ず確認してください。