アクセシビリティ検証を“怖くなくする”チェック手順入門
2025年10月30日
「アクセシビリティ対応をしないといけない」と言われても、 何から始めればいいのか分からない――。
そんな声をよく耳にします。 本記事では、専門知識がなくても実施できるライトな検証手順を紹介し、 “怖くないアクセシビリティ対応”の第一歩をサポートします。
アクセシビリティ検証=特別なツールではなく「気づく仕組み」
検証というと「専門ソフトで評価する」「全項目をチェックしないといけない」 と思われがちですが、実際には“日常的に気づく仕組み”を作ることが本質です。 小さく始めても、十分な改善効果があります。
まずは次の3段階を意識しましょう:
- 見つける:目視とツールで「気になる点」を洗い出す
- 理解する:「なぜ困るのか」をユーザー視点で考える
- 直す:無理のない範囲で1つずつ改善する
1. 見つける:まず“自分の目と耳”でチェック
いきなり専門ツールに頼るのではなく、 自分でサイトを操作しながら違和感を探すところから始めます。
- キーボード操作で全要素をたどれるか?
Tabキーでフォームやリンクを移動してみて、抜ける箇所がないか確認。 - スクリーンリーダーで読み順が崩れていないか?
WindowsならNVDA、MacならVoiceOverで数ページだけ試す。 - コントラスト・文字サイズの視認性は十分か?
無料ツール(例:WAVE)で確認。
これらのチェックは、5分程度で終わる範囲でもOKです。 重要なのは「できる範囲から始める」ことです。
2. 理解する:なぜそれが“困る”のかを知る
検証は“ルールを守る”ことではなく、利用者の困りごとを理解する行為です。 たとえば、以下のように置き換えて考えると理解が進みます。
- 色だけの区別 → 色覚に個人差がある人には、意味が伝わらない。
- テキストの代替がない画像 → 読み上げ利用者は内容を把握できない。
- 操作可能エリアが狭いボタン → 高齢者や手の不自由な人は押せない。
- 自動スライド・動画の多用 → 読解より速く進んでしまい内容を理解できない。
つまり「何が問題か」を理解できれば、修正方法は自然に導けるということです。
3. 直す:小さく修正し、繰り返す
完璧を目指すと進まないので、 まずは“1画面1改善”のつもりで手を動かしましょう。
- 画像:意味のある画像にはalt属性を。装飾画像は空alt(alt="")に。
- ボタン:操作目的を明確に(例:「送信」ではなく「申し込む」)。
- リンク:文脈のない「こちら」リンクを避け、目的語を含める。
- 見出し:Hタグを順序通りに使い、構造を明確化。
- フォーム:ラベル(label要素)を必ず関連付ける。
このレベルでも、多くの読み上げ・視覚的課題が解消します。
4. チームで継続する仕組みを作る
一度チェックして終わりではなく、 “品質管理の一部”として検証をルーチン化することが重要です。
- 更新時にチェックリストを使って簡易確認
- リリース前レビューに「アクセシビリティ確認」を追加
- 四半期に1度、主要ページを抜き取りチェック
無理なく継続することで、自然と社内に「気づける目」が育ちます。
簡易チェックリスト(5分で実施可能)
- 文字と背景のコントラストが十分か?
- 画像に代替テキスト(alt)が設定されているか?
- 見出しタグ(H2→H3→H4)が正しく順序づけられているか?
- リンク文言が目的を示しているか?
- フォーム入力欄にラベルがあるか?
まとめ:“怖さ”の正体は「知らない」だけ
アクセシビリティ検証は、特別なスキルではなく、意識と習慣です。 難しい基準を一度に理解しようとせず、 今日から5分だけ、身近なページを開いてみてください。 「気づく → 理解する → 少し直す」を繰り返すことで、 自然と“誰にでも優しいサイト”に近づいていきます。
それが、アクセシビリティ対応を“怖くないもの”に変える第一歩です。