ユーザビリティ改善の第一歩は「削ること」:情報過多が招く使いづらさ
2025年10月27日
サイトやアプリが使いにくいと感じる主因の一つは、情報過多です。
まず足すのではなく減らす。不要な情報や導線をそぎ落とすだけで、操作は驚くほど軽くなります。
本記事は、ユーザビリティ(使いやすさ)に焦点を当て、何を・どう削るかを実務目線で整理します。
なぜ「削る」と使いやすくなるのか
使いづらさは、多くの場合「選択肢の多さ」「焦点の曖昧さ」から生じます。情報を減らすと、 視線の誘導が明確になり、判断コストが下がります。結果として目的到達(完了)までの時間が短縮されます。
- 目的が並列に複数提示され、どれを選べばよいか迷う
- ボタン・リンクが過剰で、主要導線が埋もれている
- 強調色・装飾・動きが多く、注意が分散してしまう
削除対象を見極める3つの観点
1. 目的に寄与しない情報
その情報が目的達成に不可欠かを基準に判断します。
例:コンバージョン直前ページに出すべきでない外部リンク、補助的説明の長文、関連の薄いバナー。
2. 優先順位の曖昧な導線
似た目的のCTA(例:資料請求とお問い合わせ)が併存すると、選択負荷が上がります。
主要CTAを1つに統合し、セカンダリは視覚的優先度を下げます。
3. 意味のない装飾ノイズ
色・形・アニメーションは意味付けのためだけに使う。
役割が重複するスタイル(多色の強調、過度なシャドウやモーション)は削減候補です。
“削る”ための実務プロセス
- ページ目的を一文で定義(例:「製品の理解→デモ申込へ導く」)。
以降の判断はすべてこの目的に従います。 - 要素の棚卸し:全見出し・テキスト塊・ボタン・バナー・リンクを列挙し、 「目的貢献:高/中/低」でタグ付け。
- 削減案の作成:貢献「低」は削除、「中」は圧縮や下層移動、「高」は強調。
代替としてFAQや詳細ページへ二段構えに分離するのも有効。 - 定量裏付け:クリック分布・スクロール率・滞在時間を確認し、 見られていない要素を優先的に削る(測定はGA4で実施)。
- ABテスト/段階公開:一気に変えず、影響大の領域から段階的に削減→計測→調整。
UIで先にやるべき具体アクション
- 主要CTAを1つに:色・サイズ・配置で最優先を明示。セカンダリはテキストリンク化。
- ヘッダーナビの圧縮:第一階層を7項目以内に、重要でないリンクはフッターへ移動。
- 見出しの役割統一:見出しは「次に何が分かるか」を短文で示す。装飾語や比喩は削る。
- 段落を短く:1段落3〜5行目安。箇条書きで要点を並べ、余白で可読性を上げる。
- 視覚強調の節約:強調色は1系統に絞り、アニメーションはフィードバック用途のみに限定。
ミニ事例:BtoB製品ページの削減
Before:製品特長・仕様・FAQ・ニュース・他製品への横断導線が1ページに集積。
ヒートマップではファーストビュー下のクリックが5%未満。
After:主要導線を「デモ申込」に一本化。仕様・FAQは下層に分離、ニュースは削除。
結果、主要CTAクリック率+120%、完了率+35%。読みやすさと完了率が同時に改善。
削るか迷ったら――判断のためのチェックリスト
- この要素は主目的の完了に直接寄与しているか?
- 削除しても誤解や不安が増えないか?(増えるなら短い補足に差し替える)
- 同じ内容を別の場所でも言っていないか?(重複は統合)
- 強調は本当に必要か?(必要なら1箇所だけに絞る)
まとめ:引き算の設計が“迷い”をなくす
ユーザビリティ改善は、足し算より引き算が効きます。
目的に寄与しない情報・曖昧な導線・装飾ノイズを削るだけで、 視線は整い、操作は明快になります。
今日できる一歩は、主要ページの要素棚卸しと主要CTAの一本化から。確実に効果が出る削減から始めましょう。