UX改善でKPIを設定する際の落とし穴と正しい目標設計法
2025年10月20日
UX改善を進めるときに必ず出てくるのが「KPIをどう設定するか」という問題。 しかし実際の現場では、数値が目的化したり、UX指標とビジネス指標がずれていたりと、 “見た目上の成果”だけが残るケースも少なくありません。 本記事では、UX改善におけるKPI設計の落とし穴と、正しい考え方を整理します。
1. よくある落とし穴:「数字を追うこと」が目的化してしまう
UX改善では「直帰率を下げる」「滞在時間を延ばす」といった指標を設定しがちです。 しかし、これらはあくまで“結果”であり、UXの本質である「ユーザーが目的を達成できるか」を直接示しているわけではありません。 たとえば滞在時間が長くても、それは「迷っている時間」かもしれない。 KPIが“成果”ではなく“行動量”を追ってしまうと、方向性を誤るリスクがあります。
2. KPIをUXの“仮説”から導く
KPIを設定する前に、「どんなUX課題を解決したいのか」という仮説を立てることが大切です。 たとえば「問い合わせフォームの離脱が多い」という課題なら、 仮説は「入力負荷が高い」や「安心感が不足している」となります。 そこから導けるKPIは次のように具体的になります。
- フォーム入力完了率(CVR)
- フォーム滞在時間(短縮を目標に)
- 再訪ユーザー数(安心感の改善によるリピート効果)
このように、「課題→仮説→検証指標」の流れを設計することで、 KPIは“何を検証すべきか”を示す意味ある数値に変わります。
3. 定量KPIだけでなく定性評価を組み合わせる
UX改善では数値化しにくい変化も多いため、定量指標だけに頼るのは危険です。 たとえば、以下のような定性データをあわせて観察することで、判断の精度が上がります。
- ユーザビリティテストでの発話内容
- サポート問い合わせ内容の変化
- ヒートマップでのクリック・スクロール傾向
数値だけを追って“体験の質”が悪化していないかを、定性観点で補完しましょう。
4. 目標は“指標の階層”で考える
UX改善では「上位KGI → 中間KPI → 実行KPI」という階層で整理するとブレません。
| 階層 | 例 |
|---|---|
| KGI | 問い合わせ件数の増加 |
| 中間KPI | フォーム完了率、再訪率、商品詳細ページ到達率 |
| 実行KPI | ボタン可視率、スクロール率、エラー発生率など |
こうすることで、施策単位で「どの数字を改善すれば、どの成果につながるか」が明確になります。
5. KPIは“固定しない”ことが成功の鍵
最初に決めたKPIをずっと追う必要はありません。 改善が進むほど、ボトルネックや指標の意味は変わっていきます。 GA4やLooker Studioなどのダッシュボードで、 定期的に数値を見直し、KPI自体をアップデートしていくことが重要です。
まとめ:UX改善のKPIは「行動」より「達成」を見る
UX改善のKPIで最も大切なのは、「どれだけ快適に、目的を達成できたか」を測ることです。 直帰率や滞在時間ではなく、完了率・再訪率・満足度など“成果につながる指標”に焦点を当てましょう。 数字はあくまで仮説を検証するための手段。 ユーザー体験を軸にしたKPI設計こそが、UX改善の成果を最大化します。