WCAG 2.2で追加された新基準:今すぐ対応すべきポイント解説
2025年10月18日
2023年10月、WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)が2.2に更新されました。 これまでの2.1から新たに9つの基準が追加され、Web制作やUI設計の現場でも見逃せない変更です。 今回は、その中でも特に「今すぐ対応したほうがいいポイント」を、実務目線で整理します。
まず押さえておきたい:2.2で変わったこと
- 新しい達成基準が9つ追加
- 旧基準「4.1.1 Parsing」が削除(HTMLの構文エラーに関するもの)
- 操作性や入力補助など、“実際の使いやすさ”を重視した基準が中心
要するに、見た目の整備ではなく「ユーザーが迷わず使えるかどうか」がより厳しく問われるようになった、ということです。
今すぐチェックしたいポイント(A・AAレベル中心)
1. フォーカスが隠れないか(2.4.11 Focus Not Obscured)
スティッキーヘッダーやモーダルが原因で、キーボード操作時にフォーカスが見えなくなるケース。 スクロール位置や重なりを見直し、フォーカス対象が必ず見えるようにしましょう。
2. ドラッグ操作の代替手段(2.5.7 Dragging Movements)
スライダーや並び替えなど、ドラッグ操作が前提になっているUIは要注意。 代わりに「+/−ボタン」「矢印キー操作」など、ドラッグなしで同じ結果が得られる手段を設けます。
3. ボタンやリンクのサイズ(2.5.8 Target Size Minimum)
小さすぎるタップ領域は誤操作の原因になります。 最低でも24px × 24px、理想は40px前後を確保し、余白で押しやすく調整します。
4. 一貫したヘルプ導線(3.2.6 Consistent Help)
問い合わせリンクやチャットボタンなど、サポート導線はページごとに位置を変えないようにします。 「毎回探す必要がない」だけで、ユーザー体験は大きく改善します。
5. 同じ情報を何度も入力させない(3.3.7 Redundant Entry)
フォームで既に入力した内容を再入力させないこと。 自動入力や選択補助を活用し、ユーザーの手間を減らします。
6. 複雑すぎる認証を避ける(3.3.8 Accessible Authentication)
CAPTCHAなど、認知的に負荷が高い認証は代替手段を用意します。 テキスト・音声認証、またはワンタイムコードなど、誰でも通過できる設計が理想です。
現場での優先順位と進め方
- まずは「フォーカス」「タップ領域」「フォーム」「認証」の4つをチェック
- 全ページではなく、CV導線(問い合わせ、申込み、購入)を優先的に対応
- 修正が難しい箇所は、代替手段(説明文や補足リンク)でカバー
まとめ
WCAG 2.2で求められているのは、“特定の障害者向け対策”ではなく、「すべての人が迷わず使えるWeb体験」です。 特にフォームやボタン、ヘッダーなど、日常的に使う要素こそ見直しの効果が大きい部分です。 大掛かりなリニューアルを待たず、今のUIから少しずつ改善を進めていきましょう。